はじめに・CACinfrastructure | ||||||||||||||||||
1.CACシステムは管理会計のツールである。 | ||||||||||||||||||
管理面 | 管理会計は発生するであろう原価の姿を製品と工場の両面から捉える。経営革新を目論む我々は、新しい物事の発見や多様な価値観を持ち合わせ、それら取り巻き環境に即応して行かねばならない。このことは、これまで築き上げてきた価値観のライフサイクルが非常に短くなることを意味する。そのため、もはや画一的な主観的価値基準の維持では通用しないことから経営は常に新しい価値基準,VE的な価値評価基準,世界市場を見据えたグローバルなコスト価値基準を備えることが強く求められている。 企業内における様々な価値基準のなかでも,今,最優先のテーマは徹底した「グローバルコスト対応への大きなこだわり」である。特に,外部調達ウェイトの大きい企業経営にあっては,その分野に精通した精鋭人材の投入と専門性の強い革新的なツール確保が時勢を的確に捉えた対応策であることは多くの論を待たない。これまでのコスト競争は結果としての勝ち負けを決めていましたが,これからは協力企業をも含めて生き残りをかけなければならない。また競争相手も同業他社とは限らないし国内とも限らない。このことの価値共有化がされねば選別か敗退しかない。 こうした取り巻きの中で目論む収益を上げ続けるためには,組織間における様々な新しい価値基準の共有化とその実現から戦略的なコスト総合力の向上を図ること以外に良策はない。 製品を作る前に損益を細目にわたり理論的、科学的に明らかにすることは現代経営として当然であり、その責務を担う源流部門(原価企画や開発設計部門)の使命は特段に重大である。その際、製品コストはどこかのセクシヨンで誰かが独善的に、簡略的に評価算定できれば良いという筋合いのものではなく、理論と科学に裏打ちされた体系をベンチマークに関連する組織の人々が一貫した同一思想,同一価値基準でコストへの「目きき力」を養うことこそがが総合力となる。そのためには、きめ細かく損益を強く意識した受・発注価格や物づくりのコスト評価を正しく,客観的に,素早く実行できるシステマチックな収益構造改革が必然なのである。 具体的には、事業企画や原価企画部門で損益提示される必達原価内に開発・設計段階で徹底した「コストの創り込み」を敢行し、製造、調達部門で「原価保証」が確実にできる仕組み作りが強く求めれている。それら具現化のための収益構造改革支援ツールが世界市場におけるグローバルコスト価値基準を搭載したCAC・フロントコストデザインシステムである。 |
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Management | ||||||||||||||||||
技術面 |
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Technical | ||||||||||||||||||
意識面 | フロントローディングに於ける「コスト創り込み」の行いは、経営的視点を持ち合わせたアグレシブな顧客満足(CS)指向への取り組みでもある。それは常に顧客の立場に発想のスタンドポイントを置き、全ての事柄について機能的なコスト価値創造を実践することを意味する。これまでのコスト作り込みは生産部門、購買部門での力ずくが主体であった。この一極依存体質の極みは「やって見て、つぶして見て、それから考えれば良い」とした慣習を定着させ顧客満足の対応にはほど遠い積み上げ方式の現実を派生させた。これではいくら金と時間があっても到底生き残れないことに多くの経営は気づき、今、大胆な変革の必要性に迫られている。このことは、生産部門、購買部門のみでなく、これから新しい製品・サービスを生み出そうとする人、事業を安定的に継続させるしくみを作ろうとする人など、すべてのビジネスパーソンが「コスト」という価値概念を強く意識し、行動し、収益に対し責任をとらなければならなければならないことを意味している。「これを原価保証という」 |
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Skill | ||||||||||||||||||
基準面 | 戦略的に原価保証活動に取り組み成功させている企業の共通点は,VE,IE,QCなどの管理技術のレベルが高くそれに立脚していることである。このことは,管理技術に関する有益なノウハウや情報がかなり蓄積整備されていることを意味する。 これには、経営戦略的情報(戦略的売価・利益・原価情報、グローバルコスト戦略情報、収益シミュレーター、原価モデリング情報など)、固有工学的情報(新材料、新工法、新設備、新生産方式、新金型方式、生産地別(製作先)生産方式や材料情報、物流方式や価格情報など),管理工学的情報(製品設計基準書、型設計基準書、3D機構図、機能ー方式図、アイデアバンク、工法・工程設計基準マニュアル、加工緒元・設定基準など),その他情報(新規取引先開拓情報 既存取引先経営情報,成功事例や失敗事例等の情報)などがある。CAC・フロントコストデザインシステムには、これら定量化ノウハウの大半がすでに搭載されている。 このことは後述の業種別「システム操作概要書」の記載内容からも容易に知ることができる。それを組織的に援用修得しない手はない。援用修得にあたっては専任スタッフを設ける法、直接組織への組み入れ法の双方であるが多くは前者のケースである。専任スタッフは、これら価値情報を広範囲にわたり部門横断ネットワークで整備・充実させ,それを常時メンテナンスし,必要に応じて開発設計者等にタイムリーに提供するのである。これらの情報に立脚し,さらに,必達コスト情報を加味していくからコスト創り込みが成功しやすいのである。このことからわかるように,原価保証活動は,限られた期間内で大きな成果を上げるためにこれらの情報が不可欠である。その中でも特に次のようなインフラ整備は急務である。 一つは、VE技法をシステム化した機能・コストモデリングツールの構築ないし導入である。VE技法は多様な飛躍発想を促すための機能中心アプローチであり、まず顧客仕様の段階で要求する基本機能を明らかにする。次にその基本機能ごとに経営としての必達コストを合理的に割付(モデリング)設定することからこれらシステム化ないし新しい技法の修得は必修である。 二つは、IE技法をシステム化した標準原価モデリングシステムツール(客観的コスト見積りシステム)の構築ないし導入である。これは経営としての必達コスト内でのコスト創り込み検証を一定の正確さの範囲内で迅速に行うためのツールであるが,これが理論的、科学的に充実していなければ全社的・総合的な原価保証活動は到底図れない。少なくとも開発設計段階で使用する業種別、工法別、生産地別コストテーブルやシステム化されたツールは原価保証活動に必要不可欠なツールなのである。CACシステムには、これら二つのシステムが有機的に標準搭載されている。 |
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Benchmark | ||||||||||||||||||
査定面 | ||||||||||||||||||
Table Level | ||||||||||||||||||
評価面 | コスト検証に使用するツールは,標準化思想に立脚し設計仕様や部品属性の全てを意のまま反映でき、技術的、経済的シミュレーションが可能な工法別標準コストテーブル(プレス加工、旋削加工,鋳造加工、鍛造加工、樹脂成形…)でなければならない。何故なら、数千にも及ぶコスト変動要素について、開発設計段階でのコスト検討は類似品横にらみや「重回帰で概算に」とか「CADで簡略に」などと、技術の中抜き発想では戦略的なコスト創り込みはほとんど不可能だからである。 専任スタッフは,開発設計者に対し、こうした設計仕様を強く反映できる理論武装と精度の高い工法別標準コストテーブル情報をタイミングよく提供し、その活用方法の教育支援を積極的に行うことが重要な任務となる。また標準化思想に基づいた標準コストテーブル類は各企業のコスト戦略上のノウハウでもあり,その構築や取得には大きな投資と投入努力を伴うが,いざ、戦略的コスト創り込みの段になりモノサシがないでは話にならないことから標準原価計算制度の構築を計ることは必然である。コストテーブルのレベルの低い企業はコスト高の製品を作っている。逆に,このレベルの高い企業は割安なコストでよい製品が作れる体質であることはいまさら論を待たない。 なぜなら,保有するコストテーブルのレベルがその企業のコスト競争力を決定づけているからである。 原価保証活動は,これら理論武装と整備されたレベルの高いコスト情報の質と量によって成功の可否が決定づけられるといえる。言い換えれば,標準原価計算制度下におけるコスト情報の理論武装レベルが製品完成コストのレベルを決定づけるといえよう。それほど重要なものであるが,原価保証活動の導入段階ではこのことがなかなか理解されないことが多い。 |
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Making | ||||||||||||||||||
取組み面 | 管理制度や技法はどんなものであれ,新規に導入しようとすると,従来の組織,制度,仕事のやり方等に何らかのインパクトを与え,大きな変革をもたらすことになる。これに対し,現状維持を唱え革新を望まない保守的発想の人達から陽に陰に抵抗や非協力が起こる。 例えば,「そのテーマなら今までのやり方と特別に変わったやり方をする必要はない。」とか「今までのISO規定の中で十分だ」「導入する前に証明すべきだ」「それは私には関係ないことであり必要ならその部署でやればよい」などという部門間、職制間のセクショナリズムが噴出するものである。このような収益改革への抵抗を封じ、利益先取りを目的とした原価保証活動を定着させるためには,標準原価計算制度の組織的確立と経営トップ自らが更なる顧客満足を意識したISO実践改革や収益構造改革が不可欠であることを深く認識し,その導入定着化の方針を関連する各部門に明示し,自らの声で強く意思表明する必要がある。このようなトップの元に推進するから成功しやすいのである。真に原価保証活動の本質を理解するトップのリーダーシップ機能の必然性がここにある。 |
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Tackle | ||||||||||||||||||
著:管理会計コンサルタント 与那覇 三男 | ||||||||||||||||||
2.どのステージから戦略的コストを創り込むか | ||||||||||||||||||
戦略製品に対する「コスト戦略」にあっては、生産準備段階までのコスト創り込み証明が全てである。その際、既存製品コストをベンチマークにした新製品開発や機種展開コスト創り込みを「モノ」に求めるはなんらのアイデアも生みだすことはできない。本システムは、各ステージでそうした発想の弊害を払拭するために「機能」を中心に働きかけ、合理的な機能割付けから経営必達コスト及び設計コストの創り込みを実証する。 | ||||||||||||||||||
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CAC(Computer Aided Costdesign System)とは、市場価格をベースに投入される戦略製品に対し、事業企画部門で設定される経営必達利益確保を第一義に、開発設計段階で理論原価(絶対原価と標準原価)を見える化し、そのコスト内で必ず設計することで、生産、調達の各部門で絶対原価保証(Cost Assurance)を確実に行い、各製品化プロセスでその損益成果をリアルタイムでモニタリングするソフトウエアーです。 | ||||||||||||||||||